お寺にて5
しかしこの猫、やはりただで愛想が良い訳ではないらしい。
じゃあね、と立ち去ろうとしたところ、引き止めるかのようににゃおんと鳴く。
どうしたのさと少し離れて立ち止まると、猫はおもむろに座っていた縁石から降りると、とことこと歩き出した。

何だ何だとついて行くと、果たして猫はシャッターの閉まった店先で立ち止まった。
開いていないお店の前で、私を見てまたにゃおんと鳴く。
どうやら普段、このお店の人にご飯をもらっているらしい。
今日は開いてなくてご飯食べられないから開けてよ、と訴えているようだ。
しかし私は何も持っていないので、どうにもならないわけで。
ごめんご飯持ってないよ、とその場を離れた。
少し経ってから振り返ると、まだ店先には猫の姿が。
その後姿が少ししょげて見えたのは私の気のせいではないだろう。
ごめん、猫。